和製コルドバが追いかける、赤き血のイレブン達。

浦和レッズと読了書籍についてマイペースに綴ってまいります。

【書籍レビュー】【ネタバレ有】「強く生きていって、ほしい」ボトルネック

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米澤穂信氏の、タイムスリップ系?の物語。

 

舞台は石川県金沢市。

 

主人公の嵯峨野リョウが、2年前に死んだ恋人、諏訪ノゾミの弔いのため、東尋坊(福井県)を訪れたところ、不意に崖から転落してしまう。

 

しかし目が覚めると、リョウは金沢市内のベンチで寝ていた。

 

ひとまず自宅に戻ると、そこには存在しない、姉(サキ)と名乗る女性が待ち受けており、リョウはそこから、自分が生まれず逆に姉が生まれている世界と、姉が生まれず自分が生まれている世界の際を通じて、残酷な事実を認識することになる、というもの。

 

先に残酷な事実を、と言ってしまったけれども。

 

リョウとサキとの世界において、些細な点においては、殆ど違いはない。

 

家のつくりとか、街並みとか。

 

ただ、決定的に違うところに関しては、相当の差異がある。

 

例えば、サキの世界では、諏訪ノゾミが生きている。

 

兄もリョウの世界では死んだがサキの世界では生きている。

 

両親はリョウの世界ではお互いに不貞行為をはたらいているが、サキの世界では仲睦まじい。

 

よく行っていた食堂の店主は、リョウの世界では病を患ったあと、寝たきりになり閉店となったが、サキの世界では元気に営業している。

 

昔あった親戚のアクセサリー屋はリョウの世界では潰れてしまったが、サキの世界では経営している。

 

など、生死に関わったり、人生に関わることであったりで差異が生じている。

 

リョウはサキの世界で3日間過ごすことになるが、3日間で上記の事実を知り、1つの結論に辿り着く。

 

自分はサキの世界では不要な人間なのだと。

 

サッカーでも「たらればはタブー」とよく言うんだけど、この物語はそこをズドーンと突いている。

 

あのゴールが決まっていれば、とかね。

 

でもこの物語は、自分じゃなくて、姉が生まれていれば、の世界。

 

そしてその世界は、自分が生まれた世界よりも良い結果をもたらしている。

 

自分の世界への帰り方はわからず、この世界では自分の存在価値もないと思える。

 

すごい残酷な世界観だよねぇ。

 

タイトルの「ボトルネック」は、システム全体の効率を上げる場合の妨げとなる部分のことを意味するらしい。

 

それは、サキに代わり生まれたリョウ自身、ということなんだよね。

 

何とも厳しい事実を突きつけられた直後、リョウは自分の世界に戻される。

 

これもまた残酷よね。

 

サキの世界の事実を認識させられ、かつ自分の世界で生きていかなければならない。

 

ただラストは、読者に含みを持たせる書き方になっている。

 

一般的には、「現実を直視し、強く生きていった」と、「東尋坊から身を投げた」という説が強い模様。

 

個人的には、前者、であってほしい。

 

最後、母親からのメールに対して、うっすらと笑っている。

 

この笑いは、自嘲の笑いだと思うのだけれど、折角自らの世界に戻れ、サキからも激励をされたわけだから、それを無駄にせずに強く生きてほしいと思う。

 

願望も含まれているけどね笑