前回読破した迷路館の殺人が面白かったので、引き続き同著者の「水車館の殺人」をチョイス。
岡山県の奥深くに佇む、水車館。
そこに住んでいるのは、常に仮面をかぶって生活している、藤沼紀一。
これだけでも相当怪しいけど、彼には20歳近く離れた美少女の妻がおり、更に彼女には幽閉同然の生活を送らせている。
館以外の人間と滅多に会うことはなく、例外は年1回、彼の父親であった一成の美術作品を披露するときだけ。
と、設定からして相当いわくつきということがわかる。
この館では昨年、その年1回の開館日に、人が2人亡くなり、1人が失踪している。
そして今年も、同日に惨劇が起こる…というストーリー。
今作品も迷路館の殺人同様、ある程度はトリックや結末の予想は立てられると思う。
藤沼紀一は常にお面を被っているから、本当は当人ではないのではないか、とか。
そう考えると、昨年死んだと思われていた正木も別の人間だったのではないか、とか。
まぁ完璧には当てられなかったけど、それなりに正解に近づけてはいたし、人が入れ替わっているというトリック自体はありふれているものなので、そこまで難易度は高くない。
個人的には、この水車館という舞台の雰囲気と、綾辻氏の表現が絶妙にホラーっぽさを醸し出しており、そこがこの作品一番の特長だと考えている。
表紙のイラストからもわかる、山間にひっそりと佇む怪しげな異形の館。
建物の中も一般的な建物とは異なり、各塔は細長い通路で繋がれているが、死角が多く、あまり人の気配を感じない。
また、著者による描写も、上手く陰鬱さを醸し出しており、それは正に、この館においてこれからどんな恐ろしい惨劇が待ち受けているのか、引き込ませる魅力を十分に有していると言えた。
きっと、部屋を暗くして読書灯なりで雰囲気をあわせて読んでいただければ、更に楽しく読めるのではないか。
これから読む方は、是非実践していただきたい。