最近ハイスピードでミステリー小説を読破してきたけど、そろそろ一段落させようかなと思っている今日この頃。
今回は、チェスの駒のように殺人が起きる、との謳い文句に誘われて購入した、アリス・ミラー城殺人事件。
こちらも、孤島のアリス・ミラー城なる場所にて連続殺人が発生するクローズドサークル系。
城にあるアリス・ミラーと呼ばれるものを探し出すべく、探偵が集められるものの、「そして誰もいなくなった」のインディアンの唄よろしく、こちらも殺人事件が発生し、人が減るごとにチェスの駒が1個ずつなくなっていく、というもの。
最後に生き残るのは一体、そして犯人は誰なのか…。
もちろん、こういった視点で読者は読み進めたことかと思う。
ぶっちゃけて言うと、ラストは最初、「んん?」ってなったかな。
犯人はアリス・ミラー城に来ていなかった人、ってことかと。
しかし、ネット上での考察等を拝見するに、そうではなく、「最初からこのアリス・ミラー城には来ており、他の登場人物に紛れてはいたけど、それを読者に認識させないように叙述トリックを使っていた」ってことみたい。
これまでも、同様の作品はあったよね。
「殺戮にいたる病」は殺人犯を息子のように演出したし、「迷路館の殺人」は犯人の性別をぼやかしていた。
ただ今回は、事件の犯人(アリス)そのものの存在を小説からほぼほぼ消し去っているということであるから、フェアかアンフェアというジャッジはかなり微妙なラインになってくる。
もちろん、作中にアリスのセリフやそれらしき描写もあるにはあるので、読者に対して完全に隠蔽しているというわけではないけれど、よっぽど注意深く読み進めないと気が付く人はいないのでは。
そんなところと、ラストはアリスが自身以外の登場人物を全て殺害したと思われるところで物語が終わっているので、モヤモヤ感がないことはない。
ただ、叙述トリックは中々巧妙だった。
連続殺人が発生する中で、登場人物は「誰が生き残っているか」ではなく、「誰が殺されたか」ということしか会話していない。
「誰が生き残っているか」では、アリスがアリス・ミラー城にいることが明確に描写されてしまう。
だけど、「誰が殺されたか」であれば、被害者の名前しか出てこないから、アリスは上手く隠される。
また、入瀬が犯人なのでは?と読者が誤って推理するよう、仕向けていたようにも思う。
入瀬は基本、无田(ナイダ)と行動を共にしていたけれど、物語序盤~中盤の殺人に関してはアリバイがない。
无田の「君が犯人でないことはわかっている」と発言していたり、喋れない障害があるといった一種のミステリアスさも手伝い、「実は彼女が犯人なんじゃ?」と考えた人は多かったのではないかな。
トリックもあり得ないだろ!というものもなかったしね。
ただ1点、ここは明らかにおかしいのでは?と思うところがある。
第2の被害者である窓端(マドハタ)が殺害された後、彼と第1の被害者である鷲羽(ワシバ)の被害者2名と、見当たらなかった堂戸(ドウト)と山根以外は集合しており、その場で海上(ウミガミ)が「犯行現場でアリスを見た」と証言をしている。
読者からしてみれば、このアリスは、彼が見た幻覚とでも思うかもしれないが、登場人物内では、アリスはアリス・ミラー探しの探偵の一人としてしっかり認知されているはず。
そこで、海上の先述の発言があり、またアリスもその場にいたであろうにも関わらず、登場人物はアリスに関して全く言及していない。
さすがに、その場にいるんだからアリスを問いただすくらいはするかと思うのだが。
また、仮に既にその時点で行方がわからなくていなかったとしても、「これまでの被害者2人と堂戸と山根が見当たらない」という表現なのだから、これはアンフェアと言わざるを得ない。
フェアかアンフェアかと言われれば、黒よりのグレーな気がしないでもないけど笑、実際は個人的にはそこまではあまり気してない。
以前の書籍レビューでも申し上げたように、そこまで気にせず楽しんで読めればいいと考えているので。
中盤からは結構ハイテンポで殺人が起きるし、疑心暗鬼もできると思うので、フェア・アンフェア論争を気にしなければ、結構楽しめる小説だと思う。