私達はいつも、何でもないように聞き、何でもないように喋り、笑い、怒り、泣く。
それが、どれほど恵まれているかということを教えてくれた一冊。
著者は重度の自閉症を患う東田直樹氏。
彼は会話ができないが、自身そして周囲の方々の努力により、パソコン等でコミュニケーションをとることができる。
そんな彼が、若干13歳の時に執筆したのがこちらの書籍となっている。
この書籍では、いろいろな質問に対して著者が答える形式になっており、自閉症の方々の心の中を覗けるような内容になっている。
彼は、自分の想いを、自分の思う通りに表現できないことで、日々辛い思いをたくさんしてきたよう。
言葉のキャッチボールが難しいので、例えば言われた文章の中の単語ひとつを切り取って繰り返したところ、全く意図とは違う解釈をされたり。
あるいは、言われてもすぐに忘れてしまったり。
また、感情のコントロールも上手くはできないので、急に笑い出したり、涙を止めることができなかったり。
他者に自身の考えを表現することが難しいとなると、一人でいる方が楽であり、他者との関係に消極的になってしまう。
でも、著者は言う。
「「いいのよ、ひとりが好きなんだから」僕たちは、この言葉を何度聞いたことでしょう。人として生まれてきたのに、ひとりぼっちが好きな人がいるなんて、僕には信じられません」
恐らく、自閉症の子供を持つ親達は、こういった言葉を自然的に発するのだと思う。
だけど、彼らの真意はそうではない。
そんな言葉に、私達が知らないところで傷ついているのだ。
そしてその根幹にあるのは、自分の思い通りに表現ができないということ。
私自身は、表現すること、すなわちアウトプットすることは全く得意ではない。
だから、発表とか、説明とか、そう言う場面では少なからず苦慮している。
だけど、彼らの苦悩は私達の比ではない。
自分達の周りは色んな言葉、それに限らず音や景色が超高速で飛び交っており、その中に取り残されるような感覚を日々味わっているのだから。
そういう意味で、私達は何で恵まれているのかと感じた。
近頃は、いわゆるダイバーシティという考え方も以前よりは根付いてきている。
彼らのような人々が生きやすい世界となることを心から望んでいるし、そのために、私もまずは彼らを理解することから始めるのが大切だね。