書籍レビューがさぼりがちになるから、今年はしっかりやっていきたい。
と言いながら、毎年尻すぼみになっている気がするけど…笑
今回は、屍人荘の殺人。
シチュエーションとしてはこの手の作品によくある、クローズドサークルでの連続殺人、というやつ。
主人公を含む一行が、とある別荘に宿泊のために向かうのだが、そこでとある理由により、缶詰にされてしまう。
だが本著の最大の特徴とも言えるのが、そのクローズドサークルに至る経緯にある。
それが、人気ゲームシリーズを思い起こす「大挙したゾンビに襲撃され、別荘を包囲されてしまう」というもの。
なかなか斬新な、そして非現実的な設定だ。
割とここは賛否両論あるところかもしれないが、私はどちらかと言えば歓迎する方。
伊坂幸太郎氏のゴールデンスランバーも、国家から追われるという展開であり、日本じゃありえないだろ!という声がありそうだが、私は割り切って楽しめるタイプ。
↓当該記事↓
従って、本著で採用された、バイオハザードを彷彿とさせる世界観も、これはこれでアリ、と楽しめた。
また、この世界観ならではのトリックがあるところもミソ。
被害者は3名に及ぶのだが、その内の2名は、犯人に直接手を下されたわけではなく、ゾンビに喰われたことで絶命したもの。
これが読者を引き込むポイントになっている。
死体の状況から、被害者はゾンビに襲われたものと考えられるのだが、様々な疑惑が立ち塞がるため、解答に辿り着くのは困難。
ゾンビは、私たちの常識(?)にある設定に沿っているため、
- 人間を喰う
- 運動能力は低く動きも鈍い
- 知能は低い
- 頭を潰さないと死なない
といった性質を持っている。
そのため、
- ゾンビが都合よく被害者だけを襲えるのか?
- どこから別荘に入ってきたのか?
- 人為的に残されたメッセージは何を意味するのか?
などといった要因が頭を悩ませる。
ま、これがミステリーの楽しいところだからね。
また、ゾンビが別荘を徐々に侵略してくるため、どんどん主人公たちの防衛ラインが下がっていくのも、ヒリヒリ感に拍車がかかり面白い。
ラストでは犯行を暴かれた犯人が、身を挺して主人公一行を守ったうえで自決。
この状況下で共に助かる結末は有り得ないだろうから、妥当な落とし所。
クローズドサークルへの持って行き方と、締め方が良かったので、個人的には高評価。