これまでレッズを応援してきた中で、最も感情が動いた移籍はどれかと聞かれたら、間違いなく山瀬選手の横浜FMへの移籍だと答える。
当時の私は高校生。
サッカー部に所属していたものの、海外サッカーやレッズ以外にはあまり興味がなく、自身のアイドルとなる選手についても、そこまで深くのめりこんだ選手はいない。
だから当時、自分の部屋にはレッズで中核を担っていた選手として、田中達也氏・長谷部選手・坪井慶介氏と並んで、山瀬選手のポスターを掲示していた。
2004シーズン、チャンピオンシップで横浜FMに敗れ、年間王者のタイトルには手が届かなかった。
それでも、当時のチームは将来性のある若い選手達が多かったし、山瀬選手も怪我で離脱中だったから、翌シーズンにはきっとリーグタイトルに手が届くと思っていた。
そんな中届いた、山瀬選手の移籍の報せ。
しかも、レッズが敗れたチャンピオンチームに。
今はもう大人になったから、去る者追わずの精神で受け流せているだろう…多分。
だけど当時はそんな余裕なんかなかった。
多くのレッズサポーターが感じたように「裏切りだ」との感情が真っ先に沸き起こり、一気に陰鬱なオフシーズンとなったことを記憶している。
それからもう17年が経った。
周囲の近い年齢の選手達は、次々とスパイクを脱いでいるものの、山瀬選手は未だにレノファ山口で現役プロサッカー選手を続けている。
レッズも山瀬選手が移籍しながらもリーグ優勝を成し遂げ、当時の移籍感情も既に過去のものとなっている今、彼の生き様を知りたくなった。
山瀬選手の出身は北海道。
幼い頃から才能は見出されていたようで、中学生の頃にはブラジルへ単身サッカー留学をしていたという驚きの経歴。
ここで既に、自分で考える力や、自分の選択には自分で責任を持つ精神を養えたそうな。
プロになってからは、札幌⇒レッズ⇒横浜FM⇒川崎⇒京都⇒福岡⇒愛媛⇒山口とチームを移り、山瀬選手も現在40歳。
横浜FM以降のチームを離れるときは、チームから戦力外通告を受けての移籍となっているが、それでも他チームからオファーを貰い、現在でも現役を続けている。
山瀬選手が説く、ここまで現役を続けられている秘訣は、目の前のことを精一杯やり続けること。
これだけだとありがちな言葉に聞こえるが、山瀬選手の置かれている立場を考えると、より一層説得力が増す。
年齢が40歳ということもあり、若い選手ほど将来性は望めないし、パフォーマンスも若い頃に比べれば衰えているから、契約は単年契約。
従って、翌年もサッカーを続けるためには1年ごとに契約を勝ち取る必要がある。
試合に出場して結果を残すことができなければ、複数年解約選手とは異なり、当然契約満了となってしまう。
だから、試合に出場するためには日々の練習が大切⇒そのためには日々の過ごし方が大切⇒日常生活(食生活・睡眠時間)からサッカーに対して100%気を遣う…など。
確かに、自分ができることを精一杯やっているからこそ、試合にも出場できている(昨シーズンの愛媛では27試合出場)のだろうし、Jリーグ23年連続得点記録も継続中。
数多のクラブから戦力外通告を受け、大怪我を何度も経験した山瀬選手だけど、その愚直なまでの取り組みは、しっかりとパフォーマンスに表れているんだね。
まただからこそ、戦力外通告になったとしても、サッカーに100%懸けた生活に後悔はなく、前を向けているのだと。
明神選手の本のタイトルにもあったけど、「徹することができる」というのは本当に強みだと思う。
山瀬選手は今シーズンから所属している山口でも、これまで5試合中4試合に出場し、既に得点も決めている。
山口との契約がどうなるかはまだ分からないが、来シーズンもきっとどこかのチームでプロサッカー選手を続けていそうだ。
当時の感情をもう捨てられているレッズサポーターにも、オススメの書籍。