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【書籍レビュー】「後腐れのないハッピーエンド…ただ1世帯を除いては」同級生

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修文館高校三年の宮前由希子が交通事故死した。

 

彼女は同級生・西原壮一の子を身ごもっていた。

 

それを知った壮一は自分が父親だと周囲に告白し、疑問が残る事故の真相を探る。

 

事故当時、現場にいた女教師が浮上するが、彼女は教室で絞殺されてしまう。

 

著者のターニングポイントとなった傑作青春ミステリー。

 

-----------------------------------------以上あらすじ------------------------------------------

 

ミステリーであるが、実は珍しく誰も殺人は犯していないという作品。

 

被害者は主人公である西原の同級生である宮前と、教師の御崎。

 

プラス未遂という点では、同じく同級生の水村の3名。

 

その内、宮前は元々事故死ということが最初から判明している(ただし、彼女を追いかけた御崎および灰藤にその遠因がないとは言えない)。

 

そして、御崎および水村の2名については、当初は殺人という線で物語は展開するが、最終的に前者は自殺、後者は狂言ということで決着する。

 

ただ、今作においては、事件についての謎というよりも、他の部分についての謎の方が気になる方が多いと思う。

 

すなわち、「西原の妹が生まれつき虚弱体質なのはなぜなのか」「西原と水村の関係性はどうなのか」の2点について。

 

後者は物語の端々で両者が会話するものの、少々ぎこちない態度であるため、何かしらの関係はあるものだと思っていた。

 

また、西原と死亡した宮前についても、「交際していたということにする」との描写が当初からあるため、こちらは読み進めていくと薄々感じ取れると思うが、西原は水村と交際していた。

 

また、水村の父の会社が原因で自身の妹が虚弱体質となっていることが判明し、ようやくこれらが繋がる。

 

そして、それを知った西原は水村との交際を終わらせた。

 

だから会話がどことなくぎこちなかったんだね。

 

さて、最終的に宮前を間接的に死に追いやり、御崎を盾に保身を図った灰藤は罪を暴かれた。

 

西原は宮前を愛していたわけではなく、水村と交際していた真実を、親友の川合と楢崎に話し、双方から許しを得て、めでたしめでたし…なんだけど。

 

実は、1世帯だけ救いがない家族がいないか?

 

亡くなった宮前とそのご両親。

 

宮前は西原の一時の過ちで妊娠してしまった。

 

御崎に追いかけられたことで事故に遭ったという事実はあるが、交通事故時に出血多量だったのは妊娠が原因。

 

彼女の両親としても、真剣交際していた訳ではない同級生のせいで娘が死亡してしまったとなれば、浮かばれないだろう。

 

この世帯だけ最後まで救いがなくて可哀想…。