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【書籍レビュー】「ジワジワくる怖さ」天使の囀り

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ホラー小説に定評のある、貴志祐介氏による作品。

 

同氏の作品である、クリムゾンの迷宮・黒い家においては、主に人により悲劇・惨劇が引き起こされている。

 

しかし本著においては、それが人為的に引き起こされたという側面はあるものの、ホラーの根源となるのは、恐ろしい寄生虫である。

 

簡単に言えば、ある寄生虫を人間に巣くわせると、その寄生虫は品減の脳神経を支配してしまう。

 

それにより、寄生された人間は、これまで恐怖に感じていたものを逆に快く感じるようになり、やがてそれは抗いきれぬものとなっていく。

 

そして皆、自殺に近い方法で死んでいってしまう。

 

主人公である早苗の恋人であった高梨は、元々死ぬことに対して非常に恐れを抱いていた、死恐怖症の特性を持ち合わせていた。

 

そんな彼も、寄生虫に身体を蝕まれた結果、多量の睡眠薬とアルコールを同時に摂取するという、自ら死を選んだような行動を起こして死亡。

 

動物恐怖症の学者は、サファリパークの虎に自ら近づき、襲われた。

 

先端恐怖症の主婦は、自宅の至る所にフォークやナイフ等を括り付けた挙句、目を包丁で突き刺した。

 

潔癖症の少女は、汚水とも言える水場において、汚物を身体に塗りながら入水死。

 

蜘蛛恐怖症の青年は、自宅の一室に夥しい数の蜘蛛を飼育した挙句、その蜘蛛を自ら食してしまうまでに変貌してしまった。

 

この寄生虫の目的は、寄生を続けながら繁殖すること。

 

動物相手であれば、恐怖に感じることと言えば、捕食者の接近に他ならない。

 

それを逆に快感としてしまえば、上記の学者の様に、自ら捕食者に近づき食べられてしまう。

 

そしてそれを通じて捕食者に寄生し、また同様に神経を乗っ取る。

 

だが人間の場合、恐怖する対象が死に至らないようなものである場合、最終形態と呼ばれる段階に移行していく。

 

例えば上記の蜘蛛恐怖症の青年は、蜘蛛を食しこそしたものの、死にはしなかった。

 

しかし、最終形態と呼ばれる段階は、もはや人間の原形を留めないほどに変貌してしまう。

 

サイレントヒルさながら、身体から腕が生えたり、頭部や胸部が異常に膨張したり。

 

そして、この段階になった人間に触れてしまうと、その部分が破裂し、大量の寄生虫が飛散。

 

早苗と劇中で恋仲となった依田も、これにより感染してしまい、最後は自らのマンションから身を投げた。

 

グロい表現もあり、読む際には注意が必要だが、寄生虫が人々に寄生し操り死に至らせるという、いわゆるジワジワくる怖さというものを感じた。

 

途中で繰り広げられている、寄生虫や神々に関する話はちょっと長いので中だるみするが、全体的には良くまとまっており面白かった。