何気なく、歴史小説を読もう!と思い立ち購入した、「覇王の番人」。
上下巻に分かれており、そこそこページ数も多かったから読むのに時間がかかってしまったけど、本日読了。
主人公は本能寺の変で有名な明智光秀。
昔は日本史好きだったから、テストでも結構高得点を取れていたけど、今はもう頭から色々とすっかり抜け落ちている。
だから、誰がどうであったとか全く覚えていなかったので、あくまで本書を正史とするということを前提として。
明智光秀は、慈悲に満ちあふれた武将として描かれている。
自らの部下には最大限の配慮をし、自ら顔を出して礼を言ったり、褒美を与えたり、している。
そのため、家臣からは一様に慕われている様子である。
また、例え戦の敵であっても、無益な殺生はしない。
力攻めは好まず、相手との和睦を第一に考え、知略を巡らせた戦い方を得意としている。
この様に、光秀は非常に人徳に篤い性格として描かれている。
そして、光秀が使える主君信長。
信長は、光秀とは正反対の性格に見える。
天下布武を目指し、多くの家臣を従えているだけあり、判断力や行動力に長け、自らの信念は揺らがせない強い精神力を持つ。
ただ反面、短気で粗暴な性格が前面に押し出されて描写されている。
戦での敵に対しては、とにかく兵力にものを言わせた力攻めが目立った。
光秀であれば、知略を巡らせ、わざわざ力でねじ伏せずとも、和睦を申し入れて無益な殺生をしなかったであろう戦も、とにかくゴリ押しで突破し、敵将の首を刎ねる。
また敵の武将のみならず、罪なき民、女性や子供まで容赦なく弄り殺す様子であったり、自らの家臣に対しても、失態に対しては遠国への追放であったり、切腹を命じたり、とにかく激烈な性格であった模様。
当初こそ、天下布武を成し遂げるためには、信長に仕えて彼を支えることが最善の方法であると考えていた光秀だった。
しかし、前述の信長の性格からくる立ち振る舞いを長年目の当たりにし、次第に疑念を抱き始める。
この男に仕えることは、真に天下布武のためになるのかと。
そしてその疑念が、本能寺の変に繋がっていく、という構図。
物語序盤から中盤にかけての光秀は、知略を巡らし、数多の功績を挙げた。
だが終盤にかけては、彼の痛ましい苦悩の描写であったり、本能寺の変の後、長年の盟友と信じていた藤孝に裏切られ、信長征伐後、わずか10日ほどで秀吉軍に敗れ、明智家が滅亡する描写であったり、切なさがこみ上げてくる描写が多かった。
物語自体が、ある程度、光秀=正義、信長=悪と取れるような流れのため、最終的に正義は勝ったものの、戦国時代の悲しさかな、裏切られて光秀も散っていってしまうのが悲しかった。
その後は諸説あるも、本書では光秀は正体を隠し、関東で僧として生きていったという結末だった。
また、本書では光秀と彼の配下の忍についても描かれており、忍の内の一人、小平太と光秀との絆もひとつの見どころ。
当初は小平太も、完全に光秀を信じてはいなかったようだけど、光秀の人徳に小平太も魅せられるようになり、小平太は心の底から光秀を支えたいと思うようになっていった。
秀吉軍の襲撃を受け、絶体絶命となった光秀のところに、片腕を失いながらも間一髪で駆けつける小平太のシーンは熱かった。
小平太という人物は、ネットで調べても特段出てこないので、架空の人物なのかと思われる。
彼も、最終的には死なずに生き延び、光秀の娘の救出に出陣していた。
さて、この物語では、「言葉の裏を読む」というシーンが多かったように思う。
光秀目線でいえば、信長が短気であることと、家臣を試すという観点から、真意を伝えずに光秀に問いかけたり、指示を出したりして、光秀がその言葉の裏に隠された真意をくみ取る。
また、信長やその家臣の一挙手一投足にも、その行動の裏に隠された真意を推し量り、先を読んで行動する。
それができたから、光秀は信長にも重用されたし、戦でも数々の功績を挙げられた。
またそれは、光秀の部下や、小平太にもそれぞれ受け継がれていた。
この考え方は現代でも共通するものだと思う。
相手の言葉から、その趣旨を読み取り、先のことを見据えて動けば、相手のニーズに迅速に応えられる人財になれる。
戦国時代でなければ、光秀はもっと良い人生を送れたのではないかと考えられて憚らない。
理想の上司では織田信長を挙げる人が多いらしいが、私は光秀が良いな。
【おまけ】
同じ戦国時代ということで、ゲーム「信長の野望」を改造し、ポケモン版にしたおススメの実況動画をご紹介。
先般ご紹介した西美濃八十八人衆とは異なり、こちらはただてる氏の単独実況。
この方、喋りがメチャクチャうまい。
しゃべる時に、無駄な言葉をはさむことがほとんどなく、的確に言いたいことまで話を持っていける。
たまに見せる黒さも魅力的。
ただてる氏の他の動画も非常に面白いため、時間がある方は是非ご覧いただきたい。