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【書籍レビュー】「タイトルに隠された真実」氷菓

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米澤穂信氏といえば、「インシテミル」「ボトルネック」等で名を博している人気ミステリー作家。

 

今回は、書店の「人気作家デビュー作」コーナーに並んでいたこちら、氷菓の書籍レビュー。

 

今作は、至って普通の高校が舞台。

 

高校1年生の主人公、折木は高校生活につきものである勉学・スポーツ・色恋沙汰というものには特段、興味を示さない性格。

 

いわく、必要のないことはしないし、必要なことであれば手短に、という省エネ主義。

 

そんな折木は、姉からの手紙により勧められた古典部へ入部することになり、そこで同学年の千反田と出会ったところから、様々な謎に挑戦していくこととなる。

 

謎といっても、ミステリー小説に登場するような殺人事件といった重いものではない。

 

今作は普通の高校が舞台であり、日常的・身近な謎がメイン。

 

そのため、扉の鍵がかかっていた理由だとか、古典部の過去の文集の在処を突き止めるといったものが、当初折木が挑戦する謎となる。

 

普段は無味乾燥な生活を送り、特段何かに対して打ち込む姿勢を見せない折木だが、推理という面においては意外な活躍を見せる。

 

与えられた条件から、ひとつひとつの可能性を検証し、情報が足りない場合にはしっかりと裏を取る。

 

そのうえで、現実に最も近しいと考えられる結論を導き出すことができる。

 

そのため、謎に対して人一倍の興味は見せるものの、推理力に関しては今一つの千反田に引っ張られる形で、謎を解明する折木、という構図が成り立っている。

 

何となく読み飛ばしてしまうものだけど、推理に至るまでの描写には、しっかりと伏線が張られており、じっくり読んでいれば読者にも答えはわかるかも。

 

物語中盤からは、彼らが通う学園祭に文集を出展すること、また千反田には伯父の過去を知りたいという目的があり、その文集に千反田の伯父の過去が記載されていることから、文集に記載されている真実を解き明かす展開となっていく。

 

ここでも折木が持ち前の推理力を発揮して、限られた情報から、真相を導き出すのだが…。

 

彼らにとって、真相まで辿り着いたという点ではプラスだが、その真相は必ずしもハッピーではないという点ではマイナスだったのかもしれない。

 

実は、そのヒントは伯父が遺した文集のタイトル、「氷菓」に隠されている。

 

折木が作中で言っているように、確かに単なる言葉遊びなんだけど、真相を知ったうえで、この氷菓が意味することを知るとゾッとした。

 

ミステリーと言えば、ラストでどれだけ読者に衝撃を与えられるか、納得感を出せるかという点が重要だが、それをしっかりとクリアしており、デビュー作ながら非常に完成度が高い作品となっている。