お世話になっております。
先日、新入社員から勧められて読んだ「空中ブランコ」。
面白かったー。
面白い小説の特徴って、①シナリオの面白さ、②キャラクターが魅力的の2つがあると思ってるんだけど、空中ブランコは特に②が秀逸だと思う。
この小説は5つの短編から成り立ってるけど、各章に必ず登場する精神科医・伊良部一郎がとにかく個性的。
来院した患者にとにかく注射を打ちたがり、突拍子もない提案をし、本当にそれを実行に移す。
また、子供のようにはしゃぎ、人の話を聞かないなど、伊良部自身の精神年齢がとても大人のそれとは思えず、果たして本当に精神科医かと疑ってしまうほど。
また、彼の助手(?)である看護婦のマユミも、看護婦らしからぬふしだらな格好をし、伊良部の命で注射を打ち終わると、寝転んで雑誌を読み漁るという、これまた看護婦とは思えぬ態度。
ただ小説のラストには意外な一面を見せ、多くの読者を驚かせたことと思う。
きわめつけは、各章の患者となる主人公。
先端恐怖症のヤクザや、相棒を信じられないサーカス団員、義父のヅラが気になって仕方がない伊良部と元同級生の精神科医など。
どれも私生活に致命的になり得る症状ばかり。
これらを伊良部の常軌を逸した治療(という名の奇行)により改善させていく。
ただ、伊良部の患者に対する提案は、実際は的を射ているものが多い。
が、その提案が、あまりに直接的な原因に繋がっているため、常識的に考えれば実行はできないと思われてしまい、「そんな方法できるわけないだろ」「それができれば苦労はしない」と患者からはバカにされてしまっている。
大体は最終的に、伊良部に押し負けたり、うまく乗せられたりして、その提案に乗る形で症状は克服しているので、結果だけ見れば彼は稀代の名医ということになるのだが笑
現実世界でも同じように、原因はわかっているけれど、自分の地位や周りの目から、それができずにストレスを溜めてしまうことはよくある話だ。
みんなそれをわかって生きている。
だが、それが溜まりに溜まって、爆発しそうになった時は、自分を解放し、我慢をしなくても良いのだと思う。
極端に考えれば、例えば仕事を辞めたりだとか、自分のキャラが崩壊したりだとか、そういったことがあっても、死ぬことはないわけで。
自分はそうするしかない、そうはできない、という強迫観念にとらわれずに、生きていきたいですね。
それにしても、現実にこんな医者がいたら面白いなあ。
患者として行ったら、この小説の登場人物みたいに「ハァ⁇」ってなりますけど。