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【書籍レビュー】「学校が全てじゃないという考え方」かがみの孤城

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学校に行っていない、行けない中学生。

 

子供達にも有り得ないと言い切れないからこそ、考えさせられる。

 

辻村深月氏による小説、かがみの孤城。

 

7人の不登校児(1人は海外留学しているために日本の学校に行っていないだけだけど)が、鏡を通じて行ける不思議な孤城を通じて出会い、徐々に絆を深めていく。

 

元々、城に集められた理由としては、城のどこかにある鍵を見つけ出し、その鍵で秘密の部屋を開放することで、その人だけは願いを1つ叶えられるというもの。

 

あらすじだけ見て、デスゲームみたいな展開になるのかな?と思っていたけど実際にそういった展開はなし。

 

主に、彼ら7人が孤城を通じて徐々にそれぞれの性格や事情を知り、絆を深め合うところにスポットが当てられている。

 

また物語中盤、彼らが分かり合えてきた頃に明かされる、「誰かが願いをかなえてしまうと、孤城での記憶はすべて消去される」という残酷な事実。

 

彼らはそれぞれ、現実世界に問題を抱えているからこそ、学校に行っていない生活を送っている。

 

そのため、背景こそ違えど同様の現実に直面している同年代との生活は心地よく、この事実を知らされても、大方は「鍵を見つけても叶えることはしない」との方針に同意していた。

 

人は誰しも、「自分の居場所」を求めている。

 

個人的にはそれは老若男女、誰彼問わずそうだと思っているし、特に彼らのような中学生年代の子供達が、学校での居場所がないとなると、そこから足が遠のいてしまうのは必然の流れだ。

 

だけど物語終盤、主人公こころが友達の東条さんとの会話で気がついた通り、結局は所詮は学校と考えられるかどうかが重要。

 

学校に行っている子供が普通で、行っていない子供が普通じゃないなんて線引きをする必要はないし、昨今の時世で多様性という言葉が浸透してきている様に、学校に行かない・行けない子はその子なりの選択をしていけば良い。

 

自分の子供達が仮に同じ問題に直面した時、何が何でも学校に行かせたいと考えてしまわないようにしたいね。

 

またラスト、実は…という伏線回収が2つあり面白かった。

 

オオカミさまの正体については、普段彼ら7人に対して尊大な態度を取ったり、杓子定規な態度を取ったりしていたが、実は7人の内の1人、リオンが幼いころに亡くした姉の実生だったこと。

 

リオンが実生の生前に願った、実生と一緒に学校に行きたいという願いは叶わなかったけど、彼女の、リオンに日本の学校に友達を作らせてあげたい、そしてリオンともっと遊びたいという願いが、具現化されたのがこの世界だった。

 

また、彼ら7人の共通世界に存在していたスクールの喜多村先生が、7人の中で最も現実に闇を抱え、城で掟破りを犯したアキだったこと。

 

アキは彼女以外の6名に助け出されることになったが、彼女はその後精神的にも成長し、現実世界で彼女以外の心の支えとなることができた。

 

当初想像していた物語とは違ったけど、伏線回収で感動ポイントもあり、中々面白かった。