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【書籍レビュー】「脳内人物像の偏り・思い込みを上手に利用」アミュレット・ホテル

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基本情報

  • タイトル:アミュレット・ホテル
  • 発行日:2023年7月20日
  • 出版社:光文社
  • 著者:方丈 貴恵

 

主な登場人物

  • 桐生:アミュレット・ホテル専属の探偵。
  • 諸岡:アミュレット・ホテルのオーナー。
  • 水田:アミュレット・ホテルのフロント。

 

内容

アミュレット・ホテルは犯罪者専用ホテル。

 

オーナーの諸岡からホテル専属探偵として雇われている桐生は、禁忌とされているホテル内での殺人事件について、持ち前の洞察力と推理力で立ち向かう。

 

感想

アミュレット・ホテルを舞台とした4作の短編構成。

 

桐生ら主な登場人物の人物像を印象づける「アミュレット・ホテル」。

 

桐生の生い立ちを明かし、より桐生への思いを深める「クライム・オブ・ザ・イヤーの殺人」。

 

一介のスリでしかない瀬戸が登場し、一服感のある「一見さんお断り」。

 

最終章となる「タイタンの殺人」。

 

最初に読む、タイトルにもなっている「アミュレット・ホテル」が最も面白かったかな。

 

事前情報が何もない中で読んだとき、そういうことか!という最初の伏線回収の納得感が得られるから。

 

これはうまかったと思う。

 

「アリス殺し」でも感想として書いたけど、人間どうしても、文字だけの情報である場合、脳内で思い描く人物像は偏り・思い込みが働く。

 

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よって、その思い込みとは異なる事実が判明した時は、やられた!と作者の上手さを実感することになる。

 

これの正体が何なのかをネタバレすると、以下の2点。

 

  1. 冒頭で誰かの首を絞めて始末するのは桐生
  2. 桐生は実は女性である

 

冒頭、主な登場人物が描かれる前に、女性が男性の首を絞めて始末するシーンが出てくる。

 

これは後々、桐生が事件犯人の信濃を殺害するシーンだと判明する。

 

桐生はホテル探偵として、「後始末」の権限も与えられており、ホテル内の禁忌を侵した人物を処理する役割も担っているためである。

 

ただ、当初はこの冒頭のシーンは、当該事件の殺害シーンだと誰もが錯覚する(=桐生の登場シーンだとは思わない)はず。

 

なぜならば、桐生は男性だと思わせるトラップが張り巡らされているから。

 

桐生というちょっとキレのある苗字。

 

そしてなにより口調が男勝り。

 

このトラップにより、読者には桐生=男性というイメージができあがるようになっている。

 

そして作品を読み進め、最後に全てがひっくり返る。

 

やっぱり作家の方は、ラストにどういった衝撃を読者にもたらすか、という観点から逆算してストーリーや文体を考えられるよねー。