基本情報
- タイトル:ADRENALINA
- 発行日:2022年7月27日
- 出版社:株式会社ソル・メディア
- 著者:ズラタン・イブラヒモビッチ
内容
現在はすでに引退してしまったが、当時はまだACミランに所属していた、元プロサッカー選手、ズラタン・イブラヒモビッチ氏による自伝。
10年前にも当時30歳であった彼は自伝を発売しているが、そこから更に経験を積み、円熟味を増した彼が何を語るのか。
ズラタンマニア必見の一冊。
オススメする人
- ズラタン・イブラヒモビッチ氏が好きな人
- 前著「I AM ZLATAN IBRAHIMOVIC」読者
- 多少乱暴な言葉遣いでも気にならない人
サッカー好きな人なら知らない人はいないであろう、イブラヒモビッチ氏。
圧倒的なサッカーの実力は言わずもがな、歯に衣着せぬ物言いや、数々のぶっ飛んだエピソードで人気も高い。
本著は前著同様、実際に彼が話しているような口調で語られる。
彼の育ってきた環境が物語る、その乱暴な言葉遣いそのままが楽しめる一方、そういった言葉が嫌いな方は注意が必要かも。
また、前著から10年の時を経て、彼がどう成長し、変化したのか。
気になる方は是非購入をオススメする。
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感想
結論から言おう。
彼も変わるんだなと。
齢40歳になれば、色々と変化は生じるし、見えてくるものもある。
例えばプレー面で言えば、故障を繰り返すようになり、若かりし頃のプレースタイルを見直さざるを得なくなった。
それに加えて、練習へのアプローチや、身体へのケアなど、日々の過ごし方も変わっていったようだ。
彼のその立ち振る舞いから、私達はどうしても、いつも彼がパーフェクトストライカーであると錯覚してしまう。
彼自身も「神」と自称するしね。
だけど、やっぱり彼もひとりの人間だ。
寄る年波には抗いきれない。
けど、その老いを理解し、受け入れるところが彼の強さ。
受け入れられなければ、過去の栄光に拘って、いつまでも前進することはない。
過去の栄光が強ければ強いほど、それを受け入れるのは簡単ではなかったはずだ。
彼のような両手では抱えきれないほど、数多の栄光を手にした選手であればね。
だけど彼は、スッパリと受け入れた。
そこに彼の強さを見た。
また、精神的にもかなり変わった印象だ。
チームの勝利を優先とし、周囲の成長を楽しみにしている。
昔は、間違いなく自分のためにプレーしていたはず。
味方のPKを奪って新聞紙にこき下ろされていたり、得点王になることに固執していたり、過去最高の移籍金での移籍に満足していたり…。
それが彼のモチベーションの源ではあったにしろ。
そこから、チームメイトがどうやったら成長するかを常に考えるアプローチに変わっていた。
全員に平等なアプローチをするのではなく、個々に対して最適と思われるアプローチをする。
それによって、チームメイトの成長を促し、結果的にチームを勝たせる。
理想の上司みたいだ笑
もちろん、自身の得点意欲は薄らいでいない。
だが、ベテラン選手によくある「俯瞰」という視点が備わり、優先すべきことが変わっていった。
そしてやはり、子供に対しては何よりも喜びを感じている様子。
それでいて、干渉しすぎることはなく、特別扱いもしない。
子供達と接する時は、ズラタン・イブラヒモビッチではなく、父としての顔をのぞかせる。
一方、エキセントリックエピソードもまだ健在。
試合後にインタビュアーに怒鳴る、相手選手との小競り合いで侮辱の言葉を浴びせる、過去に受けたチャージの報復を試合中にやってのける…。
ただ、軽犯罪(万引・自転車泥棒・スピード違反(+パトカーとのカーチェイス))の経験も語られた前著と比較すると、そっちの方は少しマイルドになってるかな。
彼が年齢を重ね、良くも悪くも、肉体的にも精神的にも変化してきたことが伺い知れる。
前著のようなエンタメ性はないが、神ではない、人間・イブラヒモビッチをよく知ることができる一冊になっている。